富山湾から海越しに見える壮大に広がる立山連峰。
これまで国内外の観光地で多くの感動をもらったが、この富山湾から見る立山連峰の雄大な風景の前ではそれらはとても小さなものとなる。男岩、女岩、二つの岩が離れながらも寄り添うように湾に浮かぶ様はとても優しい気持ちにさせてくれ、雄大な立山連峰はどんな悩みや辛いことも全て忘れさせてくれる力強さを感じる。私にとってこの風景は唯一無二の存在だ。
この風景が一番きれいに見えるといわれる富山県高岡市。ここで生まれ育った私は毎年夏になると、海岸線を通って雨晴海岸～氷見海岸へと海水浴に連れて行ってもらった。父は決まって雨晴の絶景ポイントで車を停めてこの風景を見せてくれた。自分の幼い時の思い出には父の自慢の愛車とこの風景がしっかりと焼き付いている。

今は地元を離れ家庭をもち、富山へ帰省するのは１～２年に一度となってしまった。
帰省しても慌ただしく、この景色を思い出すこともなかったのだが、今年の帰省時「あの風景を子供たちに見せてあげたい」とふと強く思った私は、母と子供たちを連れて、富山湾が見える民宿に泊まることにした。海越しの立山連峰は変わらぬ素晴らしい雄姿を見せてくれて、とても嬉しかった。翌日の天気は晴れ。昔と同じように父がいつも立ち寄った場所からあの風景が見たいと思い海岸線を走らせた。
すると、見慣れない真新しい建物が建ち、広い駐車場まで完備された「展望台」が完成しているではないか。これには驚きと少し寂しさも覚えたが、一人でも多くの方にこの風景の素晴らしさが伝わることは嬉しいことだと思った。
子供たちが感動の面持ちで海越しの立山連峰を見ているのを見ながら私は、今は亡き父に向けて子供たちが無事に今日まで成長したことを心から感謝し、父との思い出がたくさんつまったこの風景をやっと見せることができたことに感慨深く、いつまでもこの時が続いていてほしいと願った。