何と素晴らしい光景なのだろう。
どこまでも続く青い海に、大小数えきれない緑の小島が点在している。遊覧船から見る九十九島。所々に牡蠣のいかだが揺れている。
夏の陽射しは眩しいが、風が何とも心地よい。
いい気分に浸っていた。隣では息子が売店で買った九十九島せんぺいをかじっている。

彼はガイドのおじさんの話に夢中だ。この湾に生息する生き物を図と共に解説してくれている。
特に目を奪われたのが「タコクラゲ。」面白い容貌もさることながらタコなのかクラゲなのかはっきりしない名前も気になるようだ。
「これは珍しいんだよ！見つけたらラッキーだよ！」
もうタコクラゲの虜である。身をのりだし、落ちんばかりに水面を見つめていたが、残念ながらお出ましにはならなかった。

あれから15年。
先日、息子の机の上に何とも奇妙なキーホルダーが転がっていた。よく見るとタコクラゲではないか。カプセルトイで出てきたらしい。
ところが息子は九十九島湾での出来事を覚えていないのだと言う。
これはよろしくない。また是非行くべきだ。

タコクラゲはともかく、あの景色を思い出せないというのは大問題だ。