TOP > 受賞エピソード 松島湾(宮城県)優秀賞「高台のカフェにて」
その日、彼とわたしは旬の牡蠣を食べ、湾内クルージングに出掛けた後、湾の全景を見渡せる高台のカフェに入った。
ガラス張りの店の席からは、午後の柔らかな陽射しを受けた水面が、銀色に光って見えた。船の上から見た碧さとはまた違った美しさだ。
私たちは珈琲が運ばれてもしばらく口をつけず、ただ眼下の湾に見とれていた。「あぁ松島や松島や」隣で彼がつぶやく。私が視線を向けると、少しはにかみながらこう続けた。「感動すると言葉を失うって言うじゃん。アレ、昔の人も同じだったんだな、と思って」。私も同じことを思っていた。
入江から、白い観光船がすべるように出てゆく。半年後、私たちは結婚した。想い出の地となった松島湾。あの美しさに、わたしたちはもう一度、会いに行く。
ペンネーム:歌音 / 神奈川県
この作品は、松島湾のPRポスターに掲載させていただきました。
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松島湾の受賞エピソード
MATSUSHIMA BAY