私の父は、無口で不器用で、心の優しい人です。
家族4人でショッピングに行っても、1人車で待っているだけ。家にいてもテレビを独り占めして、ニュースか野球を見ている。礼儀や規則には人一倍厳しく、褒められたことはありません。それが父の姿でした。

でも、母が仕事でいない休みの日には九十九島湾の遊覧船、パールクイーンに何度も乗せてくれたことを今でも覚えています。
父の思いで、唯一連れて行ってくれた場所。それが九十九島湾でした。
何も言わず弟と私を連れて、2人が楽しんでいるのを、後ろからそっと見守ってくれていました。今思えば、口数の少ない父なりの優しさのあらわれだったのかもしれません。

今私は、父の「お前のやりたいことをやりなさい」という言葉のおかげで、遠く離れた和歌山でいつか帰ってきて地元を元気にしたいという夢への学びのために、1人暮らしています。それでも、九十九島に思い出が沢山あって、九十九島湾が大好きな私は、今でも、父と一緒に行った九十九島湾のことを思い出します。
九十九島湾は私と父に小さな思い出をくれた、そんな存在です。